
2025年7月19日(土)午後、世界遺産に登録されているベトナム・ハロン湾にて、観光船「Vinh Xanh 58」が突如発生した強風と豪雨により転覆する事故が発生しました。
当時、船には乗客48名と乗組員5名の計53名が乗船しており、現地ベトナムメディアによると、これまでに37名の死亡が確認され、数名がいまだ行方不明となっています。乗客はすべてベトナム人で、家族連れも多く含まれていたと報じられています。
事故当日は多くの観光船が出港していましたが、事故が発生したのはこの1隻のみとなり、その他の船では被害は報告されていません。
世界遺産としても知られるハロン湾は、ハノイ近郊のクアンニン省に位置する、奇岩が織りなす幻想的な風景で知られる人気の観光地です。
これからベトナム・ハノイやハロン湾への旅行を予定されている方の中には、今回の事故を受けて不安を感じていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
現地でハロン湾発着の観光ツアーを運営するサザンブリーズからの最新情報をもとに、事故の概要、安全対策、そして今後の運航体制に関する情報をお伝えいたします。
事故の主な原因
今回の事故の主な原因は、突発的に発生した激しい暴風雨とされています。事故当日、現地では突然の天候悪化により、強風・豪雨・雷を伴う激しい嵐が発生しました。
船が転覆するまでの時間はわずか15分程度だったと報告されており、ベトナム政府および関係機関により大規模な捜索救助活動を実施するも悪天候により作業は難航。
事故原因の詳細を引き続き調査中であり、今後は運航管理体制の見直しや安全基準の強化が求められています。
ハロン湾でのクルーズ船の出港可否はハロン湾管理局が決定、出港の判断基準について
ハロン湾で運航される観光クルーズ船は、ハロン湾管理局によって出港可否が決定されます。
これは安全な航行を確保するために定められた公式な運航ルールとなっており、以下のような基準に基づいて判断が行われています。
天候や海象に基づく判断
強風・嵐・台風・高波・雷雨などの悪天候は出港中止の最重要判断材料とされています。
これらの気象条件が予想される場合、管理局は出港の禁止や、すでに出航している船には途中帰港命令を出す場合もあります。
霧などによる視界不良も、安全を脅かす要因と見なされ、出港中止の対象となります。
警報レベルによる段階的対応
天候状況に応じて、レベル1(黄色)〜レベル3(赤色)の警報を発令し、段階的に運航規制を実施しています。
- レベル1(警戒):通常どおりの運航が可能ですが、航行の監視体制が強化されます。
- レベル2(注意):航路や運航内容が制限され、湾内の穏やかなエリアに航行が限定されます。
- レベル3(危険):船の出港を禁止。ハロン湾内外での運航が全面停止となります。
出港判断のタイミング
出港の可否は、通常当日の午後3時までに正式決定されます。
その後、船会社や旅行代理店が参加者へ案内・対応を行う流れとなっています。
航路・乗船形態の柔軟な変更
警報レベルに応じて、運航内容も柔軟に調整されます。
たとえば、レベル2(注意)の際には、オーバーナイトクルーズを中止し、日帰り便に切り替える、または航路を湾の南側など比較的穏やかな区域に限定するなどの措置が取られます。
ハロン湾クルーズの事故傾向について
ハロン湾で運航されている観光クルーズ船には、大きく分けて個人事業主による運営船と、法人による運営船の2種類があります。
過去に報告されている事故の多くは、個人事業主が運営するクルーズ船に集中しています。
個人事業主のクルーズ船は、家族経営や地元オーナーによる小規模な運営が多く、料金も比較的安価で、現地での直接予約やローカル向けの利用が中心です。
個人クルーズ船は、船体の老朽化やライフジャケットの不備といった整備・安全基準のばらつきが見られるほか、天候の判断や出航中止の基準が不十分な場合もあると指摘されています。
このような背景から、日本人向けに現地でハロン湾発着の観光ツアーを運営するサザンブリーズでは、個人運営のクルーズ船は一切利用しておりません。
安全性と信頼性を重視し、厳格な基準を満たした法人運営の観光船のみを使用しております。
法人運営クルーズ船の安全体制について

ハロン湾では、観光客向けのクルーズ船には大きく分けて、個人運営と法人運営の2つの種類があります。
安全性と信頼性を確保した法人運営船の一例としては、観光船「コンギア号(Con Nghia)」が挙げられます。
コンギア号を例にすると、下記のような法定要件を満たしており、定期的な検査と保険加入を含む運航体制を整えています。
- 有効な船舶登録証および検査証
- 消防設備検査証
- 船舶安全技術証明書
- 船員の資格証明書
- 損害賠償責任保険の加入(対人・対物含む)
- ライフジャケット:乗客定員分56着に加え、予備として8着を備蓄
- 救命浮き輪:8個
- 救命いかだ:最大12名収容可能ないかだを3基搭載
ライフジャケットの着用は緊急時のみを想定していたが、2025年7月に発生した転覆事故を受けて、乗船中の常時着用を推奨する動きが広がっています。
さいごに

ハロン湾での観光船転覆事故は、多くの犠牲者を出す痛ましい出来事となりました。突然の暴風雨という自然要因に加え、運航判断や安全体制のばらつきが重なったことが、被害の拡大につながった可能性が指摘されています。
現在、ベトナム当局では事故の詳細な検証を進めるとともに、ハロン湾全体での安全管理体制や出港判断ルールの見直しが進行中です。
世界遺産にも登録されているハロン湾は、引き続き多くの観光客に親しまれる場所であり、安全性を確保した上で、その魅力を安心して楽しめる環境づくりが求められています。
情報提供:サザンブリーズ