ノートルダム大聖堂といえば、記憶にまだ比較的新しい大火災。今年12月に一般公開再開を目指し現在修復中です。5年前の火災では、フランスだけでなく、世界のニュースに流れ、私たちを驚かせました。
そのノートルダム大聖堂が今年2024年12月に一般公開再開の予定。これはパリ観光には欠かせない場所になること間違いなしです。
ノートルダム大聖堂の歴史
ノートルダム大聖堂は、パリのシテ島にあるローマ・カトリック教会の大聖堂です。1991年に周辺の文化遺産と共にユネスコ世界遺産に登録された、観光で一度は見たい建築のひとつです。そのノートルダム大聖堂のあるシテ島は、パリのほぼ真ん中に位置し、地下鉄(メトロ)4番線シテ駅からが最も近くなります。シテ島駅はシテ島内にあるただ一つの駅です。
島の中には、ノートルダム大聖堂のほかに、サント・シャペル教会やコンシェルジュリーなど見どころが多く存在する魅力あふれる観光名所で、なおかつパリの昔ながらの風景を楽しめる場所です。
ノートルダム大聖堂(Cathédrale Notre-Dame de Paris)という名称は、フランス語で「われらが貴婦人=聖母マリア」を意味しており、ゴシック建築の代表的な建物です。その歴史はかなり古く、1160年ルイ12世治世下、モーリス・ド・シュリー司教が聖母マリアを祀る聖堂を建てることを計画します。そして、その計画は国王、国民、教会の賛同を得て、1163年に着工となりました。やがてカペー朝のルイ9世時代の1245年~1250年ごろに完成したとされています。
12世紀末から13世紀前半にかけて西洋最大のカトリック教会とされましたが、最終的に現在(5年前の火災以前)の形になったのは、もっと後の1345年ごろとされており、実にゴシック建築の代表といえば、パリのノートルダムといえるのではないでしょうか。
1804年にナポレオンの戴冠式が行われたことでも有名です。戴冠式の様子が描かれた作品はルーブル美術館とヴェルサイユ宮殿に飾られているので併せて見学するのもいいですね。
ノートルダム大聖堂の見どころ
建物に入る前から、見どころは点在します。まず正面向かって左側に、聖母マリアの聖母被昇天、中側には聖母マリアが地上での一生を終える場面、上段でキリストから祝福を受けている聖母マリアが鎮座している姿をみることができます。キリストや聖人や天使が描かれており、入る前にそれらを楽しみながら探してみてください。
ゴシック様式の代表的建築と述べましたが、ファサード(建物正面)の装飾彫刻は19世紀に大幅に改修されました。着工したころ(1163年)は、世の中はロマネスク様式だったため、ファサードの一部にはロマネスク建築が見られるところが建築好き、歴史好きにはおもしろい点です。
具体的に申し上げますと、正面向かって右側のポルタイユ(入口)にロマネスク様式的な痕跡が残っています。ロマネスク様式といえば、石材でできた半円アーチなどが特徴で、ゴシック様式はとがったアーチ(ポインテッド・アーチ)が特徴です。ノートルダムの右側ポルタイユには、半円アーチをポインテッド・アーチに改造した跡があります。
建物内部にもいくつかロマネスクの特徴を残した建築が垣間見られ、ノートルダム大聖堂はまさにロマネスク様式を残したゴシック建築の傑作であり、長年かけて完成させた時代と歴史を感じられる建物です。
全長128m、幅48m、高さ91mの建物中に入って必見なのは、日本人にとりわけ人気のバラ窓です。かつて、大聖堂は長い間、風雨にさらされ、掃除されることなく、その輝きは失っていきました。それに見かねたルイ15世はステンドグラスの一部を破壊し、白めの明るいステンドグラスに取り替えました。南翼廊(みなみよくろう)のバラ窓は最も保存状態の良いステンドグラスとされています。
特に晴れた日に行くと、日の光が差し込み、ステンドグラスの色が反射し、回廊を歩くとまるで虹の中を歩いているような美しい世界感に包まれます。地面に映し出されたステンドグラスの色もとてもきれいです。
火災発生時は、熱に弱いステンドグラスが溶けてしまうのではないかと大変心配されましたが、運よく無事でした。大聖堂内の壁画も無事だったようです。火災にも耐えたステンドグラス、火災以前よりも壮大に感じられることと思います。
春は、大聖堂裏の小さな庭が美しく、大聖堂横の桜の木もフォトスポットです。夏は、木々が青々とし、正面からの建築の壮大さのみならず、からのセーヌから大聖堂をバックに木々と一緒に写真におさめたり、大聖堂後ろ側からでも絵になります。秋は気候がよく、ノートルダム大聖堂の前の広場で、おいしいパンをかじりながら眺めたりできます。
季節ごとに違った顔をみせてくれるノートルダムですが、冬に訪れるなら是非クリスマスシーズンの12月に行ってみてください。毎年12月1週目あたりに、大きなクリスマスツリーが大聖堂の前に飾られ、観光客やパリの人々を喜ばせてくれます。
聖堂内では、どの教会よりもひときわ大きく立派なクレッシュが飾られ見る価値があります。クレッシュとは、キリストの誕生を再現した模型です。24日のクリスマスイヴまでは、ゆりかごの中は空っぽですが、25日に行ってみると、キリストがゆりかごに眠っている姿を見ることができ、連続で見に行くのも面白いですね。
ただ、25日午前0時にミサが行われるため、ヨーロッパ中から人が訪れ、クリスマスイヴの夜になると何時間も並ばないと中には入れないので要注意。
正面のファサード、内部のバラ窓、そしてもう一つの見どころはやはり、5年前の火災で崩れ落ちた尖塔と十字架ではないでしょうか。
2024年12月の一般公開にむけ急ピッチですすめられている修復作業。尖塔はすでに元の通りに修復され、高さ40mの位置に飾られていた12mの十字架も今年5月には修復、地元の人に見守られながら無事取り付け完了。拍手が巻き起こりました。
ノートルダム大聖堂の大火災
そもそも、なぜ火災が起こったの?事故なの?事件なの?いつのこと?なんて感じている人も多いかもしれませんね。
2019年4月15日、18時半前後、火災警報が鳴ったのですが、この時は火は確認できず、数分後2回目の火災警報が鳴りました。そこから10分後に火が燃え上がりました。なぜ火のないところに?と思う人も多かったでしょう。ニュースで流れたときは、火災の大きさばかりが報道され、はっきりとした原因はわからないままになり、記憶にあるのは、ノートルダムが燃えたということだけ。
実は火災発生当時、大聖堂内に人はいたのです。大聖堂の天井の改修工事を行うために、建設作業員が作業をしていましたが、18時には作業を終えていたといいます。何が原因だったのでしょうか?結論からいうと未解決のままなのです。
工事をするために足場が組まれ、エレベーターが3基設置されていましたが、そのうちの1基の電気回路がショートを起こした可能性を警察当局があげています。ただ、燃えて崩れ落ちた尖塔とエレベーターは離れており、火災が起きたのは建物内だったことから別の原因が疑われました。
そこで疑われたのは、作業員の喫煙が原因だったのではともいわれています。禁煙とされていた火災発生現場から7本の吸い殻が発見されたからです。改修をおこなっていた作業員は警察に対し喫煙を認めたものの、足場施工請負業者は火災は喫煙によるものではないと否定しました。フランスのニュースでは電気回線の不具合ではないかという報道のほうが有力ではないかと言われており、フランス国民も半数以上が過失によるものだという見解を示しています。
なにはともあれ、歴史ある建造物が失われた国民の悲しみは大きく、マクロン大統領もその中のひとりです。パリオリンピック2024までに間に合うように再建するとの目標がありましたが、オリンピックには間に合いませんでした。とはいえ、修復は順調にすすみ、尖塔は無事設置されました。本来長い年月をかけてつくられたものでしたが、マクロン大統領の呼びかけで、寄付金集めやフランス人全員が参加するプロジェクトの立ち上げもあり、火災から5年経った今年、2024年の年末には一般公開できるであろうと発表しています。
なんともすごいスピードですね。これは是非実際に見てみたいものです。
ノートルダム大聖堂の修復と現在
では、いったい今どういう状況なの?と日本の人は思うのではないでしょうか。日本では火災発生時は報道されたものの、それ以来ほぼ報道されることがないので、進捗状況がつかめないことでしょう。
実際、大きく崩れ落ちたのは尖塔ですが、その周辺の崩壊の危険性のある部分も修復しなければならず、数十年の修復時間が必要ではないかと懸念されていました。
ところが、現代技術を駆使し、ロボットで遠隔操作をおこなったり、石材のひびを埋めるために特殊なものを使用したり、3Dモデルを使ったりしたことで、5年という驚異的な年月で修復できるようになりました。フランスでは、「8つの鐘が取り付けられました」「尖塔が設置されました」と、ことあるごとにニュースにそれらの映像が流れています。
それくらい、フランス国民にとっては、身近な存在であり、フランスの誇りでもあるのでしょう。
観光の再開は今現在のところ、2024年12月8日とされており、前日の7日にオープニング式典がおこなわれる予定です。それまで中には入れませんが、その周辺だけでも見てみたいという方は、是非改修中の様子をご覧ください。入口はフェンスで覆われていますが、周辺から見学できますし、「ノートルダム外観からのガイド」が、CASA(Les Communautés d’Accueil dans les Sites Artistiques)というボランティア団体主催でほぼ毎日(英語は火、金、土日14 :30~15 :30、日本語なし、団体は要予約)行っています。申し込みなどは特に必要なく、現地ノートルダム大聖堂前の広場に行けば、ボランティアの人がいるので旅行者には安心です。日にちや時間は2024年11月時点のものですので、事前にお確かめください。
一般公開に先立って、11月にはノートルダム大聖堂前広場で7日間ミサが行われたり、徐々に再開モードが感じられてきます。
これまで並べば入場できましたが、再開後は混雑が予想されるため、アプリで2日前までに予約するのが望ましく、もうそろそろアプリのダウンロードが可能になるとのことで、待ち遠しい方が多くおられることでしょう。
パリといえば、世界でもトップに入る観光地。エッフェル塔、シャンゼリゼ通り、凱旋門、、、2024年末から2025年にかけては「ノートルダムの年」となり、これまで以上にオーバーツーリズムが懸念されるところです。
火災前までは年間1200万人がノートルダムを訪れていました。特にクリスマスシーズンは多くの人が押し寄せています。かの有名なルーブル美術館を押しのけ、訪問数第1位がノートルダム大聖堂なのです。そんな中、12月に再開となれば、今年のクリスマスの時期は観光客がより一層増えるのではといわれています。とりわけ、エッフェル塔や凱旋門と異なり、入場料なしという点では混雑をいなめません(宝物庫と地下遺跡は有料)。現在のところ、平日は8 :00から18 :45、週末は19 :45までと予定されています。
…とこの記事を執筆していた11月時点の情報ですが、パリ現地時間12月8日の再開に向けた最新情報が入ってきておりますので、次にご紹介いたします。
ノートルダム大聖堂の再開 – 開催される式典や入場方法
ノートルダム大聖堂は、2019年4月の火災から約5年半を経て、2024年12月8日に一般公開を再開します。これに先立ち、12月7日と8日に特別な式典が予定されています。以下、その詳細をまとめます。
再開式典 2024年12月7日〜8日
12月7日(土)
再開式典: 現地時間12月7日午後遅く(日本時間12月8日午前2時前後)から、マクロン大統領が大聖堂前で演説を行います。続いて、パリ大司教ローラン・ウルリッヒ氏が特別にデザインされた司教杖で大聖堂の扉を叩きます。内部から詩篇が三度唱えられた後、扉が開かれ、大司教が大聖堂のグランドオルガンを祝福します。その後、ミサが執り行われます。
その後の式典では、世界的に著名なアーティストによる音楽コンサートが予定されています。
12月8日(日)
開会ミサ: 午前10時30分(日本時間午後6時30分)から、再開を記念する最初の一般向けミサが行われます(事前受付終了済)。また、マクロン大統領も出席されます。
午後5時30分(日本時間12月9日午前1時30分)から、一般の訪問者向けに大聖堂の公開が始まります。この日より、開幕週となる12月8日から15日の間は、「再開のオクターブ」として、ノートルダム大聖堂の通常の営業時間とは異なる形で、さまざまな式典が行われます。
2024年12月8日〜12月15日の営業時間および、各種式典
- 12月8日(日):午後5時30分~午後8時30分。
- ※大聖堂への入場と午後6時30分のミサは予約のみとなります
- 12月9日(月)~12月13日(金)午後3時30分~午後10時
- 12月11日(水)夕方:商店や地元住民の歓迎
- 12月12日(木):グアダルーペの聖母の祝日
- 12月13日(金):茨の冠の厳粛な復活
この日は、聖なる茨の冠が大聖堂に返還されます。
- 12月14日(土)および12月15日(日):午後3時30分~午後8時
通常営業再開 2024年12月16日〜
12月16日(月)より、 ノートルダム大聖堂は通常営業を再開します
【営業時間】年中無休
月曜日~金曜日:午前7時45分~午後7時
※木曜日は午後10時に閉店
土曜日・日曜日:午前8時15分~午後7時30分
※最終入場は閉場の30分前となります。
※大聖堂への入場は無料
ノートルダム大聖堂の入場と予約方法
ノートルダム大聖堂の予約は必須ではありませんが、再開後しばらくは混雑が予想されるため、事前のご予約を強くおすすめします。予約は公式サイトおよび公式アプリから行うことが可能です。
予約URL(公式アプリからも予約が可能です)
https://resa.notredamedeparis.fr/en/reservationindividuelle/tickets
公式アプリ 「Notre-Dame de Paris」
Android / iPhone
予約希望日の2日前から当日まで予約が可能です。
予約が完了すると、デジタルチケットがメールで送信されます。
ノートルダム大聖堂への行き方
ノートルダム大聖堂はパリのほぼ真ん中に位置します。パリ4区のシテ島の中にあり、行き方は地下鉄メトロ4番線のシテ駅(Cité)が最寄り駅です。降りるとすぐ、警察署とオテル=デュー病院があり、病院の斜め前がノートルダム大聖堂です。世界遺産に登録されているほどですので、案内の記載があり迷わず行けるでしょう。改札から地上に上がれば、花市が開催されておりパリらしい風景を見ることができます。花市はナポレオン・ボナパルトの活躍した1808年から開設されており大変歴史ある市場です。駅から大聖堂までは5分ほどですが、花市をゆっくり見てから行くのもおすすめです。
地下鉄以外ですと、RER線のサン・ミッシェル・ノートルダム駅が最も近い駅となります。こちらはシテ島の外にあるので、地下鉄シテ駅よりは少し離れますが、降りてすぐセーヌ川が見えたら、川沿いに向かってみてください。ノートルダム大聖堂は一目でわかります。
先ほど、パリのほぼ真ん中に位置すると述べましたが、実際その証拠に、ノートルダム大聖堂の正面の石畳にzero pointと書かれたプレートがありますので、是非訪れる際は探してみてください。よく地図や観光本に「パリから〇キロ」などの距離が書かれているのを見たことがあると思います。パリからの距離というのは、まさにノートルダム大聖堂を拠点にした距離なんです。
見どころ満載のノートルダム大聖堂を見学して疲れたら、シテ島内のブーランジュリーでパリジャンのようにバゲットを片手に散歩するもよし、有名アイスクリーム店ベルティヨンでアイスを買ってセーヌ沿いに座って食べるもよし、楽しみ方いろいろです。
まとめ
ノートルダム大聖堂の復活はもう間もなく!もし、ちょうどこのタイミングでパリに行かれる予定があるのであれば、ぜひこの歴史的瞬間に立ち会ってみたいものです。
BUYMA TRAVEL にはパリ在住の信頼できる日本語ガイドに登録いただいており、今回のノートルダム大聖堂の予約手配の相談や、移動の手配までサポートいたします。
今回のノートルダム大聖堂以外にも、パリにはエッフェル塔をはじめ、ルーブル美術館やベルサイユ宮殿といった数々の観光スポットがありますので、それら全てを回りたいという希望があれば、直接メッセージのやりとりをさせていただきながらスケジュールを立て、現地で通訳も兼ねながら一緒にご案内することも可能です。気兼ねなくお問い合わせくださいね。
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