フランスのルーブル美術館、アメリカのメトロポリタン美術館、ロシアのエルミタージュ美術館と並び、世界4大美術館の1つとも言われているのが、台北にある国立故宮博物院です。
台湾の首都、台北市の士林区にある国立故宮博物院。膨大なコレクションは約70万点とも言われており、保有する中国美術のコレクションは世界一とも言われています。
とくに有名な展示が天然の翡翠(ヒスイ)から作られた「翠玉白菜」です。「世界で最も有名な白菜」とも呼ばれる翠玉白菜は、台湾・台北を訪れるなら絶対に鑑賞しておきたい逸品!
本記事では、そんな国立故宮博物院の見どころや、博物館への行き方、また観光をおすすめする理由を詳しくご紹介します。
「翠玉白菜」はどうして世界で一番有名な白菜なのか? また、国立故宮博物院の白菜はなにがすごいのかについてもご紹介するので、ぜひ台北に行く前にチェックしてみてください。
中国4000年以上の歴史がここに!国立故宮博物院とは?
国立故宮博物院の起源は、約1万年にもわたる中国の歴史と深く結びついています。もとは1925年に北京で創設された故宮博物院は、宗から清時代まで中国の歴代皇帝たちによって収集された貴重な文化遺産の保護を目的としていました。
しかし、中国内戦の激化にともない、多くの文化財が台湾に移動することとなり、1965年に現在の台北の地に国立故宮博物院を構えることになります。
博物院のコレクションは、絵画、書籍、文書、古代の銅器、陶磁器、宝石など、非常に多岐にわたります。その数は69万点〜70万点と呼ばれるほど。
コレクションの数々は数千年にわたる中国の歴史を今に伝えるもので、動乱の時代に多くの文化財が失われるなか、奇跡的にも故宮博物院には多くの宝物が残り続けています。
70万点のコレクションを有しているものの、常時展示で公開されているのは4000〜8000点といわれており、収蔵品のなかには4000年以上前の陶器もあるほど。
なかでも有名な展示は、「翠玉白菜」「肉形石」「象牙透彫雲龍文套球」「雕橄欖核舟」「毛公鼎」の五大宝物。そして国宝に指定されている「谿山行旅」「早春図」「万壑松風」の故宮三宝です。
とくに天然の翡翠(ヒスイ)で作られた「翠玉白菜」が有名で、世界で最も有名な白菜として人気を集める展示となっています。
三大至宝!翠玉白菜は最高傑作と称される白菜
国立故宮博物院のコレクションのなかでも、とくに有名な一品が翠玉白菜です。台湾国内だけでなく、世界中からやってくる台湾旅行者のお目当てがこの白菜。
国立故宮博物院のシンボルでもあり、博物院を代表する展示として有名です。国立故宮博物院を訪れるなら、絶対に見逃すことはできない逸品。
国立故宮博物院にある「翠玉白菜、肉形石、毛公鼎」をあわせて三大至宝と呼ばれています。
翠玉を使った最高傑作
翠玉白菜は、中国・清時代に作られた深緑のヒスイを使用した作品です。一見するとなんてことはない普通の白菜というフォルムなのですが、素材として選ばれたヒスイは一級品で、とくにクオリティの高いものです。
深緑と白のコントラストが映える鮮やかな輝き、白菜の持つしなやかな曲線美、そして本物の白菜のような新鮮さがみごとに表現されており、「神の一品」「翠玉を使った最高傑作」と称される傑作とされています。
驚くべきことに翠玉白菜の繊細な彫刻は、一枚の翡翠の石から細工されており、とくに注目なのが白菜の葉と、その上に乗ったキリギリスがリアルに表現されていることです。
白菜の色彩は、石そのものが持つ色が使われており、緑と白のグラデーションが翡翠特有の美しさを演出。新鮮そのものの、みずみずしさを感じる白菜が完璧に表現しています。
白菜の葉脈のリアルな再現、なかに隠れた昆虫のディテール、繊細かつ巧妙に彫られた翡翠の彫刻は美術的価値も高いことなどから、いまでは世界中の人々に愛され、多くの人が見たい人気コレクションとなりました。
翠玉白菜のサイズ
翠玉白菜の大きさは本物の白菜に比べると小さいです。高さは18.7cm、幅は9.1cm、厚さ5.07cm。手のひらサイズよりは少し大きく、両手にすっぽりと収まるサイズ感です。博物院で本物をみると、意外と小さいと感じる方も多いと思います。
翠玉白菜はなぜ作られた?
翠玉白菜は清の時代末期、光緒帝に嫁いだ瑾妃の住居にあったことから、瑾妃が嫁ぎ先への持参品として制作されたとされています。彫刻の作者は不明です。
中国では白菜は縁起物です。白菜が持つ白さは「清純」の象徴でもあり、花嫁が新しい家族に対して子孫繁栄を願ったものと考えられています。また、当時は翠玉白菜だけでなく、さまざまな縁起物と一緒に飾られていたと考えられています。
また、翠玉白菜は「白菜」と「昆虫」がセットになっており、これは縁起のよいモチーフとしても知られています。
故宮博物院の五大宝物
国立故宮博物院には数え切れないほどの貴重な展示品がありますが、中でも「5大宝物」と称されるコレクションはとくに見逃せません。
五大宝物は「翠玉白菜」「肉形石」「象牙透彫雲龍文套球」「雕橄欖核舟」「毛公鼎」とされており、いずれも中国の豊かな文化と芸術の粋を集めたもので、その精巧な技術と美しさは必見の価値ありです。
翠玉白菜(すいぎょくはくさい)
国立故宮博物院を代表する展示「翠玉白菜」は五大宝物の1つにも数えられています。
翡翠で彫られた白菜はみごとな彫刻技術と、深い緑と輝く白のコントラストによる色彩の美しさが必見です。
肉形石(にくがたいせき)
天然の碧石(ジャスパー)から作られた芸術品で、翠玉白菜と並んで大人気の展示が肉形石です。サイズは高さ5.7cm、幅6.6cmです。
まるで本物の焼き豚のように見えるのが肉形石。中華料理の東坡肉(トンポーロウ)を模して作られたと言われています。
清時代の制作されたもので、層状になった天然石を掘り、石が持つ模様を活かしたまま濃淡を描くように染められています。
毛公鼎(もうこうてい)
毛公鼎は中国古代の青銅器で、西周時代に作られた重要な文化遺産です。「翠玉白菜」「肉形石と」と合わせて、故宮三宝と称されることもあります。
三本の足で支えられた青銅器「毛公鼎」は、表面に精緻な文様が書き記されていることが特徴です。器には497字の金文が刻まれており、古代中国の政治や文化、漢字のルーツを今に伝える貴重な資料とされています。
象牙透彫雲龍文套球(ちょうぞうげとうかうんりゅうもんとうきゅう)
象牙に刻まれた幾何学模様が特徴の直径12センチの球体作品が、象牙透彫雲龍文套球です。
複数の層からなる球体を一つの象牙から彫り出した中国の伝統彫刻で、内部に数層の動く球体があり、外層には精緻な龍の模様が彫られています。
それぞれの層は独立して回転することができ、彫刻の技術と精度の高さを示しています。象牙透彫雲龍文套球は、製作に非常に高度な技術と長時間の労力を要し、その細部にわたる美しさと複雑さで、中国の伝統的な工芸技術の傑作とされています。
雕橄欖核舟
小さなオリーブの種を彫刻して作られた細密な中国の技術作品が雕橄欖核舟です。サイズはわずか3.4cm。
舟には窓や人物が細かく彫り込まれており、窓は開閉もできます。虫眼鏡で鑑賞しても分かりづらいほど、小さくて精密な芸術品です。
故宮博物院の故宮三宝
国立故宮博物院のなかでも、とくに価値が高く、芸術的な完成度も非常に高いと評価されているのが「故宮三宝」と称される三つの作品です。
故宮三宝は「谿山行旅図」「早春図」「万壑松風図」の三点。いずれも宋時代に描かれた山水画となり、国宝に指定されています。
谿山行旅図(けいざんこうりょず)
谿山行旅図は中国宋時代の画家、范寬によって描かれた山水画です。広大で静寂な景観を捉えた深い空間美、幽玄な雰囲気、静謐な山の風景が細やかな筆遣いで見事に描かれています。
范寬の代表作とされており、彼の洗練された筆技と深い自然理解が光る傑作です。
早春図
早春図は、北宋時代の1702年に郭熙によって描かれた中国の山水画です。雪がとけた初春の風景が描かれています。
微妙な筆触と墨の濃淡を使い分けることで自然の息吹を巧みに表現されていることが特徴です。中国絵画史において重要な作品とも称されています。
万壑松風図(ばんかつしょうふうず)
画家「李唐」によって描かれた山水画が万壑松風図です。渓谷とそこを吹き抜ける風によって動かされる松の木を描いており、自然の荘厳さと静寂が表現されています。
絶対に見たい有名展示は3Fにあり!
国立故宮博物院には世界的にみても非常に価値のある展示品が多いのですが、観光で訪れるなら「翠玉白菜」と「肉形石」は絶対にチェックしておきたいところ。
「翠玉白菜」と「肉形石」は3階の302の部屋に展示されています。
また「翠玉白菜」「肉形石」と合わせて、三宝にも数えられる「毛公鼎」も3Fに展示されています。
国立故宮博物院はじっくり見てまわると半日から1日は必要になるので、旅行中の限られた時間を有効に使いたい場合は、まずは3Fの展示スペースから回ることがおすすめです。
【アクセス方法】故宮博物院までの行き方
故宮博物院までのアクセスは、「電車+バス」「タクシー」「ガイドツアーの利用」が一般的です。
台北MRTとバスを利用する
公共交通機関を利用して故宮博物院に行くには、電車とバスを乗り継ぐ必要があります。
台北MRT【士林駅】または【剣南路站】または【大直駅】から、故宮博物院に行くバスが出ています。
観光に便利がよくオススメの行き方は、台北MRT【士林駅】まで行き、バスに乗り換えるルートです。士林駅からはバスで約15ほど。
士林駅の1番出口を出てすぐのところに、故宮博物院行きのバス停があります。
故宮博物院に向かうバス
255、300、304、紅30、815、小19、小18、市民小型バス巴1
移動が不安ならガイドツアーもおすすめ!
故宮博物院までの移動が不安という方は、台北のプライベートガイドの利用もおすすめです。
日本語対応のできるスタッフが故宮博物院までご案内するので、コミュニケーションの心配もいらず、ホテルから乗り換えも不要でスムーズに観光ができます。
帰国日に台北の故宮博物院を訪れてから空港へ直行するプランがあることも、おすすめポイントの1つです。移動はすべて専用車なので、荷物の多い帰国日でも快適です。
また、他の観光スポットとあわせて、1日で台北を効率よく観光するプランもあり。時間を最大限に活用しながら、台北を楽しむことができます。
入場料とチケットの買い方
一般入場チケットは150元です。団体には割引が適用され、子供は無料で入館できます。
チケットは故宮博物院の入口で購入が可能です。
一般 | NTD $350 / 1名 |
18歳未満 | 無料 |
団体(10人以上のグループ) | NTD $320 / 1名 |
未使用のチケットであれば払い戻し対応あり
オーディオガイドを利用しよう
故宮博物院では音声ガイドの利用が可能です。大人用の音声ガイドは日本語に対応しています。レンタル料は「150元 / 1台」です。
レンタルのお申し込みは、1階にあるオーディオガイドカウンターから手続きください。
子供向けの音声ガイドは中国語と英語の音声のみとなり、10人以上の団体は、団体ガイドシステムの利用となります。
白菜グッズたっぷり!ミュージアムショップ
国立故宮博物院のミュージアムショップでは、「翠玉白菜」をモチーフにしたグッズが豊富に取り揃えられています。
白菜をデザインしたアクセサリー、キーホルダーやぬいぐるみなど、多彩なアイテムが勢揃い!台湾の白菜グッズは、台湾おみやげとしても人気です。
また、ディズニーと翠玉白菜がコラボした限定グッズが登場することもあり!ミッキーが故宮の展示品と組み合わされたユニークなグッズが展開されて話題を呼びました。
所要時間の目安
博物院の展示は広範囲です。じっくりと見学したい場合は、半日をみておくと良いでしょう。目的の展示だけを中心に駆け足でみて回るなら、2時間ほどをみてください。
翠玉白菜は混雑時期によっては、鑑賞に10分ほど待つ場合があります。
まとめ
国立故宮博物院は、膨大な中国コレクションと美しい展示が魅力の世界有数の博物館です。とくに「翠玉白菜」や「肉形石」などの展示品は、美術的価値も高く、台北を訪れるなら必見の価値ありです。
台湾を訪れた際には、ぜひ故宮博物院を訪れて、自分の目でその美しさと出会い、中国美術の歴史に触れてみてもらえたらと思います。
故宮博物院の基本情報
住所 | 台北市士林区至善路二段221号 |
アクセス | 【士林駅】からバス 【剣南路站】からバス 【大直駅】からバス |
営業時間 一展覧エリア(本館) | 火曜日~日曜日:09:00~17:00 月曜日:休館 |
チケット購入・交換 | 16:30まで |
一般チケット料金 | $350 / 1人 |